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# 盗人にも三分の理

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「盗人にも三分の理」

 

 「悪事をはたらくにも相応の理屈はある」という意味のことわざになります。泥棒が盗みをするのにも、それなりの理由があるというのです。言いかえれば、どんなことにでも理屈をつけようと思えばつけられるということになります。

 ちなみに「三分」というのはどの程度の割合になるのかお分かりでしょうか?割合を表す言葉として「割」「分」「厘」「毛」という漢字が当てられているのはご存知でしょう。全体を「1」とした場合、「割」=「0.1」「分」=「0.01」という意味になります。野球の打率などで見かける表現ですよね。「イチローの打率が3割7分5厘にまで上がった!」といった具合に使われます。そうすると「三分の理」というのは、全体を1として0.03、パーセントにして3%に過ぎないのでしょうか?

 実は、日常会話では「割」の意味で「分」を使うことも多いのです。例えば次のような表現を考えてみて下さい。「桜が五分咲き」「腹八分」「九分九厘間違いない」。これらは「満開の5%」「満腹の8%」「9.9%は確実」という意味で使われているわけではありませんよね。「半分は咲いている」「満腹には少し足りない」「ほぼ間違いない」という意味ですから。「三分の理」も「30%の理」があるという意味になるのです。

 また、「盗人にも」という言い方には、「誰の目にも明らかな悪人でさえ」というニュアンスが込められています。その盗人ですら、「100%の悪人ではありえない」ということが、ここでは「人間観」「人生観」として表現されているのです。ものごとを一面的に捉えることの危険性を主張しているとも言えます。人間は多面的であり、人生には驚くほど細かい複雑な事情が絡んでいるものだということ。これはある程度人生経験を積んだオトナであれば身にしみて理解している内容です。だからこそ、「オトナの判断」というものは、どんな問題についても軽率にほめたり、けなしたりはしないのです。結論は留保しておき、時間をかけてゆっくりと様子を見ることを優先します。皆さんからすれば「オトナって、ずるい!」ということになりそうですが、これこそが常識的な判断力というものなのです。

 皆さんにとっても、この「結論に直ぐにはとびつかない!」という態度は役に立ちますよ。具体的には国語の読解問題に取り組む際の姿勢として。とりわけ、物語文の登場人物の「心情分析」を行う際には忘れてはならないポイントであると言えるでしょう。物語には主人公を含めて、様々な登場人物が現れます。英語でいうと「キャラクター」ですね。「キャラ」と略して使うことも多いようです。また最近では、グループ内での振舞い方の「役割」を意味する言葉として「キャラ」という表現が使われているというのは、むしろ皆さん方のほうがよくご存知ですね。「まじめキャラ」だとか「へたれキャラ」、「いやしキャラ」などといった用法ですよね。これを論説文風に説明すると「コミュニケーションの場における振舞い方に関する類型的な役割」ということになります。

もちろん「盗人キャラ」なんてものは身近なグループ内にはあってはならない(笑)わけですが、物語文に登場する人物の「類型的な役割」ということについては、読解の際にも注意しなくてはならない内容です。特に、入試問題等で部分的に切り取られた小説の一節から、登場人物の性格の理解や心理状態の把握を求められるという場合には、まさにそこで交わしている会話=コミュニケーションの場における振る舞い方でもって、推測するしかないわけですから。ある程度の類型的な分類に基づく判断は必要でしょう。ただし、あくまでも「ある程度」です。むしろその先の「類型をはみ出る」部分にこそ、人物像を描き出す際の肝があると考えるべきなのです!理不尽な振る舞いを繰り返す「盗人キャラ」が登場した場合を考えてみましょう。物語的に盛り上がる箇所というのは、「盗人キャラ」が見せる、ほんの一部の理にかなった行動であるはずです。まさに「盗人にも三分の理」が描かれているシーンであるわけです。

 まじめだ、と思われている人間でも、100%まじめなだけで人生を過ごしているわけではないということ。へたれだ、と思われている人でも、人生のどんな場面で大胆な行動に出るかはわからないということ。いやし系の人物だと思われていた人が、裏ではとんでもない毒舌の持ち主だったということが発覚したりすること。それが人生なのです。

 ですから、「まじめキャラにも三分の軽薄」「へたれキャラにも三分の勇気」「いやしキャラにも三分の悪意」といったように、100%の「まじめ」「へたれ」「いやし」はありえないという認識で、登場人物の性格把握を行ってくださいね。ポイントは「人間の多面性」と「人生の複雑さ」ですよ。

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