文の会ブログ

「本郷東大 文の会(ふみのかい)」のブログです!
http://fuminokai.jp/
<< January 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< ざっくりと | main | 受験勉強 >>
# 必勝法

 「必勝法」

 

 「テストに必勝法なんてないですよね?」切羽詰った様子で教え子君がたずねてきます。けれども、本当にそんなものがあることを期待しているのではなさそうです。どうやら「必勝法はない」ということをわざわざ確認したいようなのです。「自分の知らないうまいやり方があるのではないかと思えて、勉強に集中ができない…」という弱音をはいてみて、「そんなものがあるわけないだろう!四の五の言わずに腹をくくって勉強しろ!」と、活を入れてもらうことが目的のようです。はじめから否定されることを前提に「そうですよね!しっかり頑張ります!」という前向きな発言をするつもりで、必勝法を聞いているのでした。ですから「必勝法を教えてください!」ではなく、「必勝法なんてないですよね?」というたずね方になるのです。

 そのことを分かった上で、あえて答えます。「今から七百年も昔に、必勝法は明らかにされているよ。超有名な随筆の中でね。では問題です。文学史の常識、日本三大随筆といえば?」急に質問で返された教え子君は戸惑っているようですが、さすがに「文学史の常識」とまで言われれば知らないではすまされません。「清少納言の枕草子と、鴨長明の方丈記と、吉田兼好の徒然草です!」正解ですよ。ついでに「七百年前」という条件に合うのはどの随筆なのかということも確認しておいてくださいね。平安時代中期の枕草子は約千年前、鎌倉時代初期の方丈記は約八百年前、そして鎌倉時代末期の徒然草が約七百年前ですからね。

 「徒然草にテストの必勝法が書かれているんですか!?」と教え子君は色めき立っていますが、勝負事の必勝法を徒然草の百十段は示しているのです。短い段ですので、全文を引用してみましょう。

 双六の上手といひし人に、そのてだてを問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手かとく 負けぬべきと案じて、その手を使はずして、一目なりともおそく負くべき手につくべし」といふ。道を知れる教、身を治め、国を保たん道も、又しかなり。

 以下に意訳をしてみましょう。すごろくの名人と呼ばれている人に、その必勝法を聞いてみたところ、「勝とうとしようと思って打ってはいけない。負けないようにしようと思って打つのだ。どんな打ち方をしたらすぐに負けてしまうかを予測して、その手は打たないようにして、一マスでも負けるのが遅くなるような手を使うのがよい」と答えた。その道を極めた人の言うことであって、これは研究者や政治家の生き様にも通じる。こんな意味になります。

 徒然草には他にも「名人」と呼ばれる人物が登場しますよね。弓矢の名人であったり、木登りの名人であったり。それぞれに、含蓄のある言葉を発してわれわれをうならせてくれます。弓矢の名人なら「二本の矢を持つな!一本入魂で行け!」だったり、木登り名人なら「油断大敵!高いところよりも、地面に近いところが危ない!」だったり、なるほどな!と思わせる話が紹介されています。勝負事の必勝法について教示してくれるのは「すごろくの名人」です。すごろくといっても、皆さんが知っている、さいころを振って上がりを目指す「人生ゲーム」のようなすごろくではなく、「バックギャモン」(かえって皆さんにはなじみがないですよね。ヨーロッパで人気のボードゲームです。)に近い対戦型ゲームのようです。日本では平安時代に大流行しています。枕草子や源氏物語にも登場するほどです。当時の大人気競技の名人に話を聞くという内容ですから、平成の今に当てはめるならば将棋の羽生名人に必勝法をたずねるというかんじでしょうか。『決断力』というタイトルの新書がベストセラーにもなった羽生名人ですからね。今も昔も、勝負の世界に生きる人からヒントをもらう、というのはかわらない欲求なのでしょう。

 さて、教え子君に伝える「テストの必勝法」でした。すごろく名人の話をテストに置き換えてみましょう。「負けないようにすること」というのは、すでに経験したことをふまえて「これをやるとまずいことになる!」というパターンを避けるということ。逆に「勝とうとすること」というのは、経験したことはないがあえてチャレンジしてみること、になります。やったことがないパターンにチャレンジすることですね。既存のルールをはみ出したところに独創性は生まれるものです。けれども、テストの意義を考えてみましょう。それは「やったことが試される」というものです。テストとはあくまでも「学習済(経験済)のことがらの定着が試される」という趣旨のものです。発想のユニークさが評価されるというようなものではないのです。それは数十分のテスト時間で求められるものではありませんよね。ですからテストの必勝法は、「四の五の言わずに勉強して、経験値を上げろ!」ということです。結局、活を入れることになりましたね(笑)。

 

 

 

 

 

 

JUGEMテーマ:大学受験

JUGEMテーマ:幼児教育

JUGEMテーマ:中学受験

JUGEMテーマ:受験生

JUGEMテーマ:高校受験

| comments(0) | trackbacks(0) | 23:44 | category: つれづれ |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://fuminokai.jugem.jp/trackback/80
トラックバック