文の会ブログ

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# 平穏無事

 「平穏無事」

 

 「へいおんぶじ」と読みます。「平穏」というのは漢字をそのまま訓読みすれば「平らで穏やか」ということですよね。「平ら」とは「浮き沈みがなく、変わったことがない」という意味になります。「穏やか」というのは「安らか」と言い換えてもいいですね。ですから「平安」という熟語も同じような意味になるわけです。「無事」というのも漢字そのまま訓読みすれば「(特別な)ことがない」という意味ですよね。特別といっても嬉しいサプライズとかいう話ではなく、よくないことに近いニュアンスになります。「悪いことが起こらなくてよかった」という意味を表しているのです。「つつがなく」という和語に置き換えることもできますね。

 ですから平穏無事というのは「変わったことがない」と「特別なことがない」の二つの同じような意味の熟語を組み合わせて、「何も起こらない」という内容を強調した四字熟語になるわけです。年賀状でのあいさつの文面に「おかげさまで家族みな平穏無事に暮らしております」というパターンがありますが、平穏無事という四字熟語がかもし出す雰囲気をよく表している用法だと思います。何もなくてよかったです、という報告になりますから。でもこれが言えるのは、人生経験をつんできた大人だからこそなんですよね。小・中学生の皆さんにとってみれば「何も起こらない」というのがそんなにいいことなのか?と、正直思いませんか!平穏無事をありがたがる大人の感性というのは、一体どうなっているのか、不思議に思ったりしませんか?

 自分の身に新たに何かが起こるというケースを考えてみて下さいね。成長の過程にある思春期の皆さん方であれば、これまでできなかったことができるようになるといったポジティブな変化がほとんどでしょう。ついこの前の自分と比較してみても、それは明らかではないでしょうか。同じ中学生でも一年生と三年生では大人と子どもの違いにすら感じられるでしょう。これほどの心身の変化は、人生の中でも他にはありませんからね。ところがある程度年齢が進み人生も後半にさしかかると、これまでできたことができなくなるという、皆さん方には想像もできない場面が出現するようになるのです。ネガティブな変化ですよ。階段をかけ下りられなくなる…小さな文字が読みにくくなる…固有名詞が覚えられなくなる…「それは老人の話じゃないですか?」という声が聞こえてきそうですが、これらのことは老人になって急にできなくなるのではなく、徐々に進行していく現象なのです。何を隠そう私が現に体験していることばかりです(笑)。成長のピークを過ぎれば、あとは下り坂に向かうという自然現象なのですが、なんとかこれに逆らいたいと思うのが人情というものです。老化を防ごうとするアンチエイジングという言葉を皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。だとするならば、平穏無事であってほしいという大人の願いの切実さが分かろうというものでしょう。むしろ、このままがいい!という心の叫びでもあるわけなのです。

 私と同世代である方々が多い思春期のお子さんを持つ親御さんというのは、ちょうどこのエイジング(良く言えば「熟成」、悪く言えば「老化」)がどんどん進行する時期でもあるのですよ。一方で子どもはというと反抗期の真っ只中。話しかけても口ごたえされるか、返事すらないか、そんな状況です。もちろんそうして親離れが進んでいくのですが、親御さんにしてみれば「子どものままでいてほしい」というのは、心の奥に秘めた望みでもあるわけです。このまま自分も家族も変わらずにいてほしい!平穏無事にこめられた親御さんの思いというものを、ほんの少し理解してくれればいいのですが…反抗期がそれを許さないのですよね。皆さんが「中学一年生のままでいたい!」などと望まないのは百も承知なんですよ。

 「何も起こらないようにする」というのは、心配性の大人が「子どものために何も起こらないでほしい」と願い、その価値観を子どもに対して押し付けているわけです。それではいけない!ということは親御さんもよく分かっているのです。何も起こらなければ何もできるようにならないし、何よりそれでは子どもが楽しくないではないか、と。子どもの成長を願うならば、新しいことへのチャレンジを後押しして応援し続けよう。挑戦する子どもたちの姿にハラハラしながら気をもみ、ドキドキしながら見届けよう。そんな平穏無事とはかけ離れた波乱万丈な心理状態が続くのですから。せめて平穏無事を祈ることぐらい、親御さんにさせてあげて下さいね。私からも皆さんにお願いします。

 

 

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