文の会ブログ

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# 悪魔の証明

 「悪魔の証明」

 

 「国語は苦手ではないです」という教え子君が、目の前で入試問題を解いてみせてくれることになりました。なにも「僕が解いているさまを、先生にぜひ見せたいんです!」という要望があったわけではありません。苦手ではないとは言うものの、自信を持って得意だ!とは言い切れない生徒です。自分でも何か足りないところがあると思うからこそ、相談に来たのでしょうから。そこで「じゃあ実際に解いてみせなさい」ということになったのです。

 50分の試験時間が設定されている問題でした。快調に解き進めている様子が伝わってきます。でも40分を過ぎた頃からそわそわし始めました。どうしたの?と聞くと「解き終わりました」というのです。まだ試験時間終了まで10分もあるよ!見直しをしたり、できることがあるでしょう?と聞くと「見直しもしましたし、もうこれで答えが変わることはありません」と断言するのです。なにやら「国語が得意ならば速く解き終わるものなんじゃないですか」とでも言いたげな素振りです。

 これから採点をする私にしてみれば、この時点ですでに答案には何か重大な見落としがあるに違いない、と予測がたってしまいます。出題文を丁寧に読んでいないのではないか?設問をしっかりと吟味していないのではないか?教え子君には申しわけないですが、ダメ出しをする気満々で、採点を始めることになりました。

 まずは出題文も設問も、ちゃんと時間をとって読み解きます。○×だけつけておしまいというわけにはいきませんから。解いているうちに、教え子君がすぐに解き終わったと言いたくなる気持ちもわかりました。50分の試験時間の割には設問数も少なく、ほとんど記号選択問題だったのです。教え子君が「えい、やっ!」と適当に記号を選んだとは思いませんが、本来ならば時間をかけて確認しなくてはならないことを、やらずにすませてしまったに違いないと、選択肢の特徴から理解しました。「本文の内容と一致するものを次の中から選びなさい」というパターンがほとんどなのです。この場合、不可欠な手続きとして選択肢の一つひとつの文を文節レベルまで丁寧に分析し、きっちりと消去法で答えを導き出さなくてはなりません。今回の問題の場合、さらに大変だったのは「この選択肢の文に示されている内容は、本文のどこにも書かれていないことがらなので、正解だとはいえない」という形式の消去パターンを駆使する問題が多いという特徴があったのです。これは曲者なのです。設問数が少ないのに試験時間が長い意味がわかりました。そこで教え子君に聞いてみました「悪魔の証明って知ってる?」と。

 「悪魔の証明」というのは、ある事実や現象が「全くないこと」「存在しないこと」を立証する場合に、そう呼ばれます。その意味合いは「証明することが非常に困難であること」「そもそも不可能に近いこと」にあります。たとえば、「近所の公園にカブトムシがいる」という事実は、その公園で一匹でもカブトムシを捕まえれば、立証に成功したことになります。けれども「公園にカブトムシは一匹もいない」という事実を立証しようとすれば、「捕まえられなかった」というだけではすみません。一匹もいなかったというからには、公園内に生息する昆虫をすべて捕まえた上で「その中にカブトムシは存在しなかった」ということを示さなくてはならないからです。「存在=ある」ということの立証と「不存在=ない」ということの立証では、その難易度が天と地ほどの差があることがおわかりでしょう。

 また別の見地からこんな例はどうでしょうか。お母さんから「リビングにハサミが置いてあるからとってきて」と頼まれたものの、探したけれども見つからなかった場合、「リビングにハサミはなかった」と言い切れるのか?という問題です。「ない」とこたえているのに「本当にちゃんと探したの?」と聞かれれば、どこまで確認すればいいのか自信が持てなくなってしまいますよね。さらに、お母さんが探しに行ったら「ここにあるじゃないの!」と言われてしまった経験があったりしませんか(笑)。ことほどさように「ないものはない」と明らかにすることは困難であるわけです。

 入学試験でこのタイプの「本文中に書かれていないことを根拠に選択肢から外す」という問題が出題された場合に、「ない」ということの確認のためにチェックし続けるとしても、時間も限られている中でどこまでやればいいのか?という悩ましい問題を抱えることになります。出題者としても、その点を配慮して「試験時間」と「設問数」を決定しているはずです。ですから、「ない」と思っていたのに「ほら、ここにあるじゃない!」と言われないようにするために細心の注意を払って限界までチェックすることは、試験においては可能なのです。

 教え子君には、試験時間の設定にはちゃんとした意味があるということと、「手がかりがない」ことを探すタイプの問題は特に、時間をかけてチェックしなくてはならないということを伝えました。国語を得意だと言えるように精進することを宣言してくれましたよ。

 

 

 

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